9.12.2009

第8回 ~私はルールを侵した~

2008年9月19日 北京南駅にて

 私は昨日と同様に王府井方面のバスに乗ることになる。
午後6時過ぎ帰宅する富裕層の人々で車内はごった返している。
北京は都市域が広く、天津から到着した列車は南駅へ、石家庄方面は西駅へ、張家口方面は北駅へ、東北方面は北京駅へといった具合にターミナル駅は四方に散っている。
従って中心部へ直接乗り入れる鉄道がなく、繁華街である王府井へ行くためには、バスかタクシーを利用しなくてはならない。
 北京奥運の特集でクローズアップされたこともあって記憶していた人も多いかもしれないが、多くの北京の人は大概バスに乗るとき順番を守らない。
バス停の周囲に群がり、バスが接近すると慌ただしくなり到着するや否や我先に乗口へ群がる。
バスが完全に停車する前から車道へ出てくるため1人や2人轢かれてもおかしくないと思う。



前門前バス停
 
 ドアが開く。
アコーディオンのように連結された長大なバスがみるみる人間で埋まっていく。
確かに座りたい気持ちはわかる。
王府井までは遠回りするので20~30分。
日本人ならかかり過ぎだろ、という喝入れたくなるハズ。
当局側の道路整備が悪いせいだということは誰の目にも明らかだ。

 私は別の系統のバスを見ていて思った。
割り込みをするのは若い人や子供ではない。
アラフォー~団塊くらいだ。
何とも大人気ない。
どうやら文化大革命世代であるが、今回はあまり深読みしないでおく。
とにかく意気旺盛なのだ。

 私の乗る北京駅行きのバスが来た。
私は後ろから押されるがままバスに乗り込む。
ラッキー、座れそうだ。
そう思った瞬間、おばさんの怒鳴り声が。
私はまさか自分が呼ばれるわけないと思い着席のままであったが、近くの人が中国語で私に向かって何か訴えているようなので、振り返ると、おばさんがチケットをかざしてこちらを睨んでいるではないか。
どうやら北京では乗車時に券を買うらしい。
西安では降りるまでに女車掌が回ってきて券を買うのが常であったために少し不可解に思ったが、それならば、と思って席を立つ。
(ちなみに中国ではバスは未だにワンマンではなく60年代日本のような「ツーマン」)
 ところがである。
財布の中には5元紙幣しかないのだ。
しゃーないよね、おつりくれるよね、と思って5元を渡そうとすると、ダメだとおばさんは手を振る。
「おつりをくれ」という意味を込めて何故か「exchange」と言ったが、おばさんに英語が通じるはずもない。
今考えると非常に滑稽な図であった。
それはさておき、おばさんの手元には大量の1元札が握られているのを見て、私は改めて5元で払えないかと頼んだが今度は物凄い形相で猛反対してきた。
もしかすると私が日本人だとバレたから余計に火が点いたのかもしれない。おいおい、おつりあるなら買わせてくれたっていいだろ。

 とうとうおばさんは外を指差して「○○」と言い出した。
降りろというニュアンスは120%伝わってきた。
言葉は分からなかったが、言い方が憎らしいし周囲に聞こえるくらい大声だったのがムカついたので、私は日本語で「黙れクソババァ」と怒鳴った。
すると、周囲の乗客も口を揃えて「○○」(降りろ?)を連呼。
何だこいつら。
協力してんじゃねーよ、観光客を労われ。
私はここで人民共和国って恐ろしいな、と思った。
・・・いや待てよ。
1元って硬貨もあったよね、ふと思い出して小銭入れを見た。
あ、あるやん。
急いでおばさんに硬貨を渡す。(自分で言うのもおかしいがテレくさそうに渡す。)
おばさんは「謝謝」と応える。
どちらかといえば私が謝々(もしくは対不起)ではないか?
そして他の乗客も何事もなかったかのように静まり返った。
あーよかった。それにしても中国人ってのは熱しやすく冷めやすいな、とこの時思った。

 成る程、この20~30分後、王府井に着くことができたワケで、これでおしまいカシマシ娘となると単なる地球の歩き方の読者コーナーからも蹴落とされる次第なワケで、もちろんそんな話がしたかったワケではない。
私はこの夜宿泊先で大きな後悔を抱えていた。
振り返ってみるといかに恥ずべき行為だったのかと情けなくなったのである。

 私はルールを侵したのだ。あのとき私は中国という国のルールに逆らったのだ。
意見を述べることは良しとしよう。
だが今回の悶着は違う。
完全に私が自分中心で物事を進めようとした結末だった。

 「郷に入りては・・・」

なんてよく言うがまさにそれだ。
中国人には中国人なりの文化があるわけでそれに基づいたルールがあることを忘れてはならない。
私は中国の文化が好きで行ったはずが文化に逆らった。
一体何をやっているんだ。
私は深い後悔にこの夜悩み続けた。



~To be continued・・・

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